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それでいったいぼくはどうしていたというのだろうか、

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森山が26歳の時に知り合って3年間ほど付き合った3歳年上の女性の思い出を書いている。当時森山はすでに妻... • PETAPETA


森山大道『通過者の視線』を読む - mmpoloの日記

18年後、ふと乗った電車が停まった駅が昔彼女が住んでいた駅名だった。思わず降りて、昔彼女が住んでいたアパートへ行ってみる。「階段に錆びて並ぶ郵便受けのひとつに、まぎれもなくS子の名前があった」。ドアの前に立ち、衝動的にドアをノックする。もう一度ノックして5秒待ち、素早くドアを離れて急いで階段を下りて路上に戻った。

……留守であったのであろうか。待っている5秒の間に、ぼくはさっと我に帰ったのである。胸が鳴り汗がどっと吹き出した。よかった、留守でよかったと思った。もし留守でなかったとしたら、46歳のぼくが50歳に近いS子と再会していたことになる。それでいったいぼくはどうしていたというのだろうか、もしかりにうわべをとりつくろい合ったとしても、お互いに、たとえようもない無惨な時間を持ったはずである。もしかしたら、とり返しのつかない冒瀆行為をしていたことになる。いや、もうすでにしていたのだ。ぼくは自分をせめはしなかったが、自身に対して砂を噛むような後味を味わった。しかし、あの瞬時の空白の行動はいったい何であったのだろうか。それは、懐かしさなどではなく、ぼく自身のなかの哀しみでもあったろうが、S子への哀しみであったのかもしれない。分からない。ぼくは夕方の街頭の人ごみにまぎれて渋谷に帰った。

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