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国道58号線

あるサイトで2年間にわたって続けてきた連載が、つい先日終了した。その最終回の原稿を書いているとき、最後の数枚で不覚にも涙が出てきた。そんなこともあるかもしれないと、ふと想像してはみたが、まさか本当に泣くとは思わなかった。感動巨編でもなければ、大恋愛小説でもないのだ。

本格的な統治が開始された1948年からの10年間は、沖縄の通貨は「B円」(Type B military Yen)と呼ばれ、復帰の72年まではドル紙幣が使用された。このとき米軍がまずおこなったことはインフラの整備であり、軍用機が緊急着陸できる幅を持った軍用道路「軍用1号線」(那覇から嘉手納を経て名護にいたる)が完成する。

軍用1号という幹線は戦後の歴史をずっと見つめ続け、そして今では58号線となっている。いまだにいくつもの基地を結んでいるこの幹線を限りなく上下移動しながら、何がそこで生まれたのかというバック・ストーリーを紡いでゆくことが、この連載のテーマだ。

58号線沿いに並ぶ店舗や家屋は、いまだにアメリカ時代の空気を残している。コンクリート・ブロックの建物、基地の脇に建つホテル、ドライヴ・インのような構えを残すハンバーガーの店。しかしそのどれもが、いまや老朽化を隠せなくなっており、やがて消えてゆく運命に晒されている。あと10年もしないうちに、大半は新しいものに取って代わられることだろう。そのときアメリカとじかに接した世代の人々は口を閉ざし、自分の内面にだけ残る光景と静かに会話を交わしながら、特にそれを伝えることもなくこの世を去ってゆく。

人は戦後をどう生き抜くのか。占領下で出会う異国の文化は何をもたらすのか。暴力的に米国と出会った沖縄で、人の根源的な強さと優しさを探す紀行ノンフィクション。

アメリカのパイを買って帰ろう―沖縄58号線の向こうへ

アメリカのパイを買って帰ろう―沖縄58号線の向こうへ

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