飯田蛇笏全句集を買った。キンドルになっている。ポケットの中に入る。毎日持って歩ける。未来。
「暮らしのヒント集」
日曜の朝、いつものコーヒーショップで読んだ、暮しの手帖「暮らしのヒント集」の中に、
本屋に行って詩集を一冊買いましょう。知らない作家のものでも、すばらしい作品がたくさんありますから。
とあった。えー、詩集かあ、と思った。まあ、つまらない話をウェッブで眺めるよりは全然良いだろうな、と思った。その帰りに、コンビニで買った毎日新聞と朝日新聞の書評に、西東三鬼全句集があった。キンドルになっていた。おっ、と思った。
「西東三鬼全句集」
水枕ガバリと寒い海がある
- 季語は「寒い」。冬の句
- 水枕は熱が出たときにつかう、あの水枕のこと
句集といえば、松尾芭蕉の全句集が積読になっている。で、引っ張り出してみた。
「芭蕉全句集」
かびたんもつくばはせけり君が春
- 季語は「春」。新春の句
- かびたん(甲比丹/Kapitein/captain)は、長崎出島のオランダ商館長のこと
- つくばはせる、は、つくばわせる、這いつくばる、ひれ伏すこと
- 君、は、ここでは徳川家綱のこと
でも、ちょっと待て、と。松尾芭蕉とか、たしかに有名だし、「おくのほそ道」も読んだけど、それじゃあまりにも偏っているだろう、と。多様性が損なわれているのは悪じゃなかったのか、と。で、特定の誰かじゃなくて、江戸時代みたいな過去じゃなくて。で、「定本 現代俳句」を見つけた。西東三鬼の句も載っているらしい。キンドルになっていた。おっ、と思った。
「定本 現代俳句」
で、ここでちょっと思い当たる。西東三鬼とか、たしかにカッコイイけど、そんな縁もゆかりもないところじゃなくて、山梨には誰かいなかったっけ? あ、蛇笏か、飯田蛇笏だ! ということで、「飯田蛇笏全句集」を買った。キンドルになっていた。おっ、と思った。
「飯田蛇笏全句集」
冱えかへる山ふかき廬の閾かな
- 季語は「冱えかへる」。春の句
- 廬は山廬(サンロ)。山廬とは蛇骨の居宅のこと
- 閾は敷居のこと。閾値の閾。Threshold
- 冱えかへるは、冱え返る、冱返る。サエカエル、イテカエル。
- 春になり、ゆるみかけた大地が、寒さのぶり返しで再び凍りつくこと
俳句の世界では春。そして月曜日、雪が降っている。今週末、床屋にはまた行けなかった。