via http://www.billverplank.com/Lecture/
それは今から10年ほど前、あるデザインに関する国際会議のセッションでのこと。一人の初老の男性がステージ左手から登場し、壇上に置かれていたOHP(オーバーヘッド・プロジェクター)に近寄り、その横にドカっと腰を下ろしました。彼は、おもむろに、透明のOHPシートに黒のマーカーで「直書き」しながら、話し始めたのです。
何枚ものOHPシートが、即興的なイラストで埋められ、説明がなされていきます。インタラクション(相互作用)のデザインとは何か? そこでデザインされるべき道具とは? 語られていく言葉と描かれる図解はきわめて的確で、あたかも即興的に見えながら、実に周到に準備されている(彼の頭脳と身体の中に経験的に蓄積されている)ことは明らかでした。わずか20分ほどの短いプレゼンでしたが、いまだにその記憶は鮮明に焼き付いています。
この見事なプレゼンを行ったのは、ビル・バープランクという研究者/デザイナー。マウスやGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)の研究に草創期から携わり、今から数十年も前にスタンフォード大学で「ビジュアル・シンキング(視覚的思考)」という概念の研究実践にも関わっていた人物です。