その怪異の第一は、自分の郷里高知付近で知られている「孕のジャン」と称するものである。孕は地名で、高知の海岸に並行する山脈が浦戸湾に中断されたその両側の突端の地とその海峡とを込めた名前である。
孕の地形を見ると、この海峡は、五万分の一の地形図を見れば、何人も疑う余地のないほど明瞭な地殻の割れ目である。すなわち東西に走る連山が南北に走る断層線で中断されたものである。さらにまたこの海峡の西側に比べると東側の山脈の脊梁は明らかに百メートルほどを沈下し、その上に、南のほうに数百メートルもずれ動いたものである事がわかる。
対岸の孕町から望む東孕の大畑山