これは2025年6月の日記の本番です。
なぜイーサネットはエーテルなのか
イーサネットはなぜ「エーテル」という単語を使ったのかとか、
https://copyanddestroy.hatenablog.com/entry/2025/06/07/005942
The Computer as a Communication Device – Creatures of Thought
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ロバート・メトカーフは、秋季合同コンピュータ会議の議事録を閲覧していた際に、ノーマン・エイブラムソンの ALOHAnet に関する論文に出会いました。
メトカーフは当初、パケット・ブロードキャストを PARC に導入する計画を “ALTO ALOHA network” と呼んでいました。その後、1973年5月のメモで、19世紀の物理学者があらゆる電磁波を運ぶと考えた光伝導体エーテルにちなんで、この計画を「イーサネット」と改名しました。「これにより、物事は汎用的になります」と彼は記しています。
The Computer as a Communication Device – Creatures of Thought
ニュートンは1675年の『光の仮説』で、粒子間の力を伝達するエーテルの存在を仮定した。1704年にニュートンは『光学』を出版し、光の粒子理論を詳しく説明した。彼は光が極めて微細な粒子から成り、通常の物質はより粗大な粒子から成り立っていると考え、ある種の錬金術的変換を通じて「粗大な物体と光は相互に変換可能ではないか。そして物体は、その構成に入る光の粒子からその活動の多くを受け取るのではないだろうか」と推測した。
17世紀の光学革命 - taizooo
あるきっかけ
ちょっとした tweet を見かけて、そこからネットワーキングの歴史を追いかけていた。まとめようと思っていたけど途中で飽きて(途中でイラっとくることがあって)、開いていたタブを全部閉じてしまった。もったいなかったかもしれない。
今週末の良かったこと(サッカーがない、テクい道、エーテル) - copy and destroy
ことの発端は Windows 95 に TCP/IP スタックが実装されていたのかどうか、という tweet だった。
大昔、暇にまかせて、打ち捨てられていたかなり古い Compaq のモニタ一体型のカワイイ PC に、フロッピーディスクを何枚も何枚も差し替えて Windows 95 をインストールしたことがある。拾ってきた ISA バスのイーサネットを挿して、ドライバーをフロッピーディスクからインストールして、インターネットに接続した。
ということで、「最初から実装されていました。デフォルトでは有効になっていませんでした」とお知らせした、というものだったのだけれど。
イラっとしたことが2つ。
1つは質問した本人がこの一番最後にした tweet が、礼に失したものだった、というもの。もう1つはいくつもリプライがついてきて、それらがどれもインターネットで拾ってきたものをそのまま、わかったような口をきくものだった、というもの。
File:Compaq Presario 425 (31404884663).jpg - Wikimedia Commons
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というようなことは、まあどうでも良くって、
これをきっかけに記憶と記録を漁っていた。 Windows 95 と漢字 Talk 7.5 には最初から TCP/IP スタックが実装されていた。 Windows も Macintosh もネットワーク対応していたけれど、軸足は TCP/IP にはなかった。Microsoft のそれは NetBEUI 、Macintosh にとってそれは AppleTalk だった。
AppleTalk ( LocalTalk )が、その実現のために選んだ技術は注目に値するもので、それについてはまた改めて書きたい(予定は未定です)。
Apple Talk は Macintosh にビルトインだった Mini DIN8-pin のシリアルポート( RS422 )を使っていた。RS422 は送受信2チャンネルの全2重化なので高等で高価。これをデイジーチェーンに繋いでネットワークを構成した。送受信を接続されたマシン同士がバケツリレーしていた。
今週末の良かったこと(サッカーがない、テクい道、エーテル) - copy and destroy
タネンバウム『コンピュータネットワーク』
そんなわけで(どんなわけで?)、アンドリュー・タネンバウム『コンピュータネットワーク』を購入した。中古、2002年、第4版(最新版は2020年、第6版)。まだ、パターソン&ヘネシー『コンピュータの構成と設計』も途中なのに。積み上がる積読山脈。
メトカーフが ALOHA Net から採用したプロトコルは、 OSI 参照モデルでいうと下層から2つ目のデータリンク層の一部(副層)、メディア・アクセス制御副層と呼ばれる階層のものだった。
IEEE 802で規定されているサービスとプロトコルは、7層からなるオープンシステム相互接続(OSI)ネットワーク参照モデルの下位2層(データリンク層と物理層)にマッピングされます。IEEE 802は、OSIデータリンク層を論理リンク制御(LLC)とメディアアクセス制御(MAC)の2つのサブ層に分割し、以下のように定義しています。
https://en.wikipedia.org/wiki/IEEE_802
- データリンク層
- LLCサブレイヤー
- MACサブレイヤー
- 物理層
File:Comparing OSI and IEEE 802 network stacks.svg - Wikipedia
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ひとこと TCP/IP と言ってもそこには様々な技術が折り重なっている。
まだうまいことなにか書けるだけの理解はない。数式が出てきて全然理解できないけど、ちょっとずつ読んでいる。
もう1つのきっかけ
baku89 サンの Cosense で発見した、永原康史サンの『ワールドワイドウェブのこと』。
今週末の良かったこと(永原康史サンの文章から繋がるシェアと正義、ゼロックスとバック・トゥ・ザ・フューチャーの話) - copy and destroy
そのままスルっと読み流してしまうところだったけど、ちょっとしたきっかけで踏みとどまる。
結構長大だったから、これはすごい面白い文章に違いない、とは思ったもののちゃんとは読んでいなくて、そしたら後で nagayama サンが引用していて、ここで初めてなんとなく書かれていることの一端を掴んだ感じだった。
今週末の良かったこと(永原康史サンの文章から繋がるシェアと正義、ゼロックスとバック・トゥ・ザ・フューチャーの話) - copy and destroy
そんなふうにして、もう1つのきっかけと出会うことになる。
永原康史の他の文章を探してみました。同じサイトにこんな面白いものがありました。
今週末の良かったこと(永原康史サンの文章から繋がるシェアと正義、ゼロックスとバック・トゥ・ザ・フューチャーの話) - copy and destroy
ローテク、ローファイ、インスタント
理想工学のリソグラフ(と、プリントゴッコ)、ハイファイへのカウンターとしてのローファイ、グリッチ、ノイズ、エラー、
i-D マガジン、タイプライターの文字を切り貼りしたホチキス止めの Zine 、ダイモ、スタンプ、ステンシル、コピーマシン、ゼロックス、ソニー・ポーターパック、そして Macintosh 、
インスタントの時代。 DIY の精神。
これについても、まだうまいことなにか書けるだけの理解はない。部分だけの話をすると、これ。
DTP の3要素とは、第1は WYSIWIG のプラットフォームで、 Mac などがあてはまる。
第2はPDL( page description language )である PostScript で、これはその時点でハイエンドでも取組みが始まっていた。
第3がパソコン上のシュリンクラップされたレイアウトソフトである
DTPの衝撃と定義 1986-1987
最初の PostScript プリンタは Apple の LaserWriter だった。
https://en.wikipedia.org/wiki/LaserWriter
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PostScript は完全なプログラミング言語であり、適切なインタープリタで実行され、その後ソフトウェアラスタライザプログラムに送られます。これらはすべてプリンタ内部で実行されます。これをサポートするため、 LaserWriter は 12MHz で動作する Motorola 68000 CPU 、 512KB の作業領域 RAM 、 1MB のフレームバッファを搭載していました。発表当時、 LaserWriter は Apple 製品ラインの中で最も処理能力が高く、 8MHz の Macintosh を上回っていました。その結果、 LaserWriter は Apple の製品の中でも最も高価なものの 1 つでもありました。
https://en.wikipedia.org/wiki/LaserWriter#Hardware
LaserWriter のコストはドットマトリックス インパクト プリンタの数倍であったため、プリンタを複数の Macintosh で共有する手段が求められていました。LAN は複雑で高価であったため、Apple 社は独自のネットワーク スキームである LocalTalk を開発した。 AppleTalk プロトコルスタックをベースにした LocalTalk は、 RS-422 シリアルポートを介して LaserWriter を Macintosh に接続しました。
https://en.wikipedia.org/wiki/LaserWriter#Networking
DTP の衝撃、PostScript 、 LaserWriter 、 LocalTalk 、AppleTalk 、ネットワーク。
ここで話が振り出しに戻る。思いもしないところで思いもしないものが繋がる。
歴史にはいろいろな事象が折りたたまれている。たくさんの必然や偶然が重なり合って歴史を作っている。
https://copyanddestroy.hatenablog.com/entry/2019/12/01/000000#1989
なにが僕をつかんで離さないのか
インターネットの始まりの話は、ずっと僕の心を掴んで離さない。
インターネットの始まりは、というと1つは ARPANET 、もう1つはバークレーと呼ばれるけれど、実はもう1つある。
結局、1980 年頃には、3つの文化が存在し、それぞれはその周辺の部分で重なりあっていたが、非常に違ったテクノロジーによってまとめられた。 ARPANET と PDP-10 文化は LISP 、MACRO、 TOPS-10 そして ITS によってまとめられ、UNIX と C は PDP-11 と VAX と貧弱な電話回線(USENET)によって結びつけられた。そして、初期の熱狂的なマイクロコンピュータファンたちのアナーキーな群れは、コンピュータの能力を一般の人々に向けて解放した。
https://web.archive.org/web/20230709114640/http://linuxjf.osdn.jp/JFdocs/history-4.html
「熱狂的なマイクロコンピュータファンたちのアナーキーな群れ」。このことはなんとなくは理解していたんだけどまったく腑に落ちていなかった。ずっとそれがなんなのか探していた。それが急に空から降ってきた。この第3の文化こそが永原康史サンの言っていた「インスタントの時代」であり「 DIY の精神」なのであった。
いうなればこれは、ほかの何者でもない、僕らのことなのだ。
というわけで、
そんなふうにしてだいぶ脱線、散逸していて、ジョン・ロールズ『道徳哲学史講義』「カント講義」(後半)は完全に停滞している。マズイ。このままだと、どれも、なにも、手にすることができない。なんとかを追うものなんとかを得ず。マズイ。