美しい里山なんてものはなく、排ガスまみれの国道や県道、荒れた畑、プレハブの廃屋、いかにもまずそうな客のいないラーメン屋、切れた街灯。ポツンと建つ家には電気が灯っているが、ここで行き倒れてもその家の人はきっと出てきてもくれまい
セックスとクルマしかなくて、でもどこを運転してもイオンタウンと洋服の青山と東京靴流通センターとパチンコ屋とファミレスがあるだけ。
東京にいた頃はホームセンターを見かけなかった。だからホームセンター的なものが必要になった場合、どうすればホームセンター的なものを補充できるのかわからなかった。自転車も建築資材も安い家具も洗剤も下着もそこですべて揃えることができるのだ。ここに住んでいるひとはどこでガムテープを買うんだろう。
皮肉ではなく、ほんとうに。探さないと見つからない、というものではなく、どこにでもあるもの。スナックだってラブホテルだってワンルームマンションだって、そこらへんにいくらでもあるものばかりだから。