ティム・インゴルド『ラインズ』第3章 「上に向かう・横断する・沿って進む」をノロノロと辿っているけど、前に読んだときに引いたハイライトがことごとく違う感じで「そこじゃないだろ」って言いながらハイライトを引き直している。
原書でおそらく "organ" と書かれている語を「器官」と翻訳していて、「道具」とは別のものとして扱っている。
帝国の野望に駆られて、英国海軍は船団を地理座標系のなかに位置づけられた目的地へ迅速に派遣しようとした。そこでは伝統的な海上旅行の技能は疎んじられ、点から点へ航海するための計器による計測が採用される。司令官にとって、船は海上旅行の器官ではなく、輸送の容器であった。
オーストラリア西部の砂漠では、アボリジニは自動車を徒歩旅行の器官に変えてしまった。ダイアナ・ヤングが説明するように、ブッシュのなかで彷徨する自動車は身体の動きのように操られる。運転手は岩や切り株やウサギの穴のまわりを巧みに通り抜け、徒歩で旅する人々の足跡と同じように理解され解読される轍を残す。すなわち「車の通過が土地につけるしるしは運転手の身体動作だと考えられる」
そういえば、日記を書くこともラインを引くことだ、とか言えたりするかな、なんて思ったり。