詩をひとつ手帳に書き込むとき、ほとんど完成したかたちで、みすゞは書いていたようだ。頭のなかで考え続け、よし、これでいい、というかたちへとまとまってから、それを彼女は手帳に書いたのだ、と僕は推測している。手帳のページという紙の上で推敲した形跡が、ないと言っていいほどに少ないからだ。
左開きの手帳を右開きで使うため、みすゞは天地をひっくり返して使った。デザイン処理された1925という年号が、写真のなかでは確かに倒立していた。風景の描かれた布を丸く切り抜き、表紙の右上に彼女は貼った。
天地をあっさり逆にして右開きとして使った手帳、というものを僕は見たかったのだが。