歴代のなかでも、ヨハネ・パウロII世ほどマスメディアを積極的に利用したローマ法王はいないとよく言われる。ジェット機を利用して各国を訪問する姿は、わたしたちの目に焼きついている。現代の情報通信と交通の力を最大限に使い、超人的なスケジュールをこなしつつ平和のメッセージを発し続けたという点では、どんな大国の指導者でも法王にかなう者はいない。同時にその絶大な権力を疑う者はいないであろうが、しかし権力者というものは本来、自らの力の衰えを出来る限り隠そうとするものである。歴史上の権力者が、それにいかに腐心したかを考えてみると、法王の映像がなおさら例外的なもののように思えてくるのである。
教皇離任 2005年4月2日