「英文収録 おくのほそ道 ドナルド・キーン」
以下、「芭蕉における即興と改作」より引用
閑かさや岩にしみ入る蟬の声
この句に秘められたもう一つの効果を指摘したい。漢字と仮名で表記すると分かりにくいのだが、ローマ字で書くとすぐ分かる。
shizukasa ya iwa ni shimiiru semi no koe
iという母音が七回出る。そして「いー、いー」という七回のiは蟬の声を表しているのだ。
夏草や兵どもが夢の跡
natsukusa ya tsuwamonodomo ga yume no ato
ここで重要な役割を果たすのはoである。どの国の詩歌でもオーというのは悲しみの音なのだ。