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今週末の良かったこと

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正月休みと雪崩落ちる積読山脈の話

この休みに、12月の半ばに気まぐれに買った「世界文学全集 短篇コレクションⅠ」を読了した。ブルース・チャトウィン「黒ヶ丘の上で」から小説づいている。小説って数えるほどしか読んだことがない。小説、英語では "Novel" 。これは "New" を意味するそうだ。"A Happy New Year"

「世界文学全集 短篇コレクションⅠ」、フリオ・コルタサル「南部高速道路」、冒頭、これのスピーディーさにすっかりやられてしまった。スピーディーさにやられたにもかかわらず、この小説は高速道路の渋滞の話だったりする。

で、このコレクションで気に入ったのは、金達寿「朴達の裁判」、トニ・モリスン「レシタティフ――叙唱」、アリステア・マクラウド「冬の犬」、マーガレット・アトウッド「ダンシング・ガールズ」。 短篇コレクションⅠはヨーロッパ以外の作家、ということもあるのだろうけど、その中でもちょっと辺境というか周縁を扱ったようなストーリーが心をつかんだ。


窓拭きが終わった日に、國分功一郎「暇と退屈の倫理学」を買った。記憶をたどると2019年に「退屈とはなんなのか」なんていう事柄に囚われたことがあって、そのときからずっと心の積読山脈ベストテンに連なる一冊だった。この年末にちょうど文庫化されたのと同時にキンドル化されたので気まぐれに読み始めた。いつものとおり飛ばし飛ばしで先に結論を読むと、「この本は結論だけ読んでも当たり前のことしか書いてない。通読しないと意味が理解できない。」と書いてあった。よし、じゃあ通読してやるわ、って序論から一気読みした。半分ずつ、まる二日で読みきった。遅読な自分としてはここ最近では最速だった。不平等の話、ファシズム、環世界、痛みは記憶である、時間の話といったここ最近追いかけていた話題が全部、この一冊に絡め取られてしまった。言ってみればまだ解いていない問題集の解答例を全部、先に読んでしまったみたいな感触。「ここに書かれていることは、本当は、この先、自分自身で発見するはずだった」、みたいな。いつもだったら注釈にぶら下がっている参考文献をダーっと盗んでいくのが通例なんだけど、しばらく触りたくないな、と思ってしまった。

ちょっと途方に暮れてしまって、手っ取り早く別の本でも読んで、このモヤモヤを上書きしてしまおうと思った。ということで、読みかけのピーター・ドラッカー『「経済人」の終わりに』に、一瞬手をつけるものの、ページは1ミリも動かず。


で、これまた心の積読山脈ベストテンの一冊、ティム・インゴルド「ラインズ」を買った。2021年の総集編みたいな本を読んでしまったので、いまこの場所から一番遠くまで行けそうな本を、ということで選んだ。「序文、まったくなに言っているのかわからない! 全然、頭に入って来ない! いま居る場所からめちゃめちゃ遠い!」。「本を読むってのは、こうでなくっちゃ!」。本の内容だけじゃなくって、自分もなにを言っているのかわからない。まあ、だが、しかし、いま自分が居る場所から遠くに行くことが出来る、ということで言えば、本というのはビークルだと思うし、どうせ乗るならバカっ速いヤツに乗りたい。そういうことだ。

この本は紙の本で買うべきか、キンドルでもイイかとちょっと思い悩んだ。どうしてかというと、紙の本はそのまま手がつかずに積読山脈の地層になってしまうことが多くて、キンドルだとすぐに手をつけて読み始めるんだけど結局、そのまま読みかけで塩漬けになってしまうことが多いから。ということで、さきの「暇と退屈の倫理学」と同じように一気に読んでしまおう、であるならば、いま読もう、すぐ買おう、ということでクリックしてダウンロードした。一瞬で空から降ってくる。2021年と2022年、大晦日と元旦をはさんでその隙間で読み進めた。この本もまる二日で読みきった。


大晦日に、ジョン・サザーランド「若い読者のための文学史」を買った。ちょうど「世界文学全集 短篇コレクションⅠ」を読み終わったタイミング。全然「若い読者」じゃないけど、原題は "A LITTLE HISTORY OF LITERATURE" つまり「文学小史」なので誰が読んでも大丈夫。イェール大学出版の「リトル・ヒストリー・シリーズ」は前々からちょっと気になっていた。読みたかったのは「1922年」について書かれている第28章だった。

「文学史上すばらしい年は数々あれど、1922年は最もすばらしい年だと言えよう。この年がすばらしいのは、その年(そしてその前後の年)に出版されたものによって、文学の未来に対する読者の考えが変わったためである。」「2022年は大きな100周年記念となる。」1922年前後には大きな変化を生んだ作品が名を連ねているそうで、それはジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」、ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」といった作品。

「長篇小説というのは基本的に伝記であり年代記である。そうではない型式、技法が勇敢な作家たちによって開発されてきた。その代表が、ヴァージニア・ウルフと ジェームズ・ジョイスである」という話が「世界文学全集 短篇コレクションⅠ」折り込みの「短篇の時間、長篇の時間」に書かれていた。それを確認しておきたかったというわけ。

そしてこの「若い読者のための文学史」の第37章を読んで「文学」、これってじつは広大な Web なのだと気づいてしまった。気づいてしまったからには掘るんだろうな。ということで、2022年は轟々と雪崩落ちる積読山脈のなかで幕を開けた。

それから

今週末のプレイリスト、1曲目は1年前のプレイリストから The JuJu Exchange "The Circuit"

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