明けても暮れても、稽古の日々である。蜷川舞台と聞いて、誰もが「大変そう」と、口々に言うが、その期待を裏切ることなく——壮絶である。別に、よく噂に上っているように、灰皿が飛んできたりするわけではない。蜷川さん本人も、「噂と違って優しいだろ」と、その噂をちゃかすほどだ。みんな和気藹々と、いろんな話を交えながら、稽古は行われている。じゃあ、いったい何が…って、全体のエネルギーが、もう、すでに、壮絶なのだ。
まず、本番と同じサイズで作られたセットが、稽古初日から、稽古場にそびえ立っていた。普通、稽古の初期は、ままごとのようであったりする。床にビニールテープで、扉の位置だの、階段だのといった、装置の大体の作りが描かれており、そこで、ジャージ姿の役者たちが、真剣にお芝居していたりするものなのだ。しかし、蜷川組は違う。仮であろうとも、実寸のセットを組み、衣装から、小道具に至るまで、ビシ〜ッと揃っている。だから、我々役者は、本番同様の扮装をし、本番さながらの稽古をすることが出来るのだ。
携わるスタッフの数も違う。こちらも、本番間際にならなければあまり会うこともないのが常なのだが、蜷川組では、初日からずーっと、演出部、美術部、音楽、衣装、メイク、総動員で稽古に付きっきりなのである。とりかかる姿勢もこれまた凄い。皆、稽古場なのに無線機を携帯し、臨戦態勢。いつ、いかなる展開になろうが、オーダーが入ろうが、かなりの確率で、期待に応えてくる。これには驚きである。
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2005年には蜷川幸雄演出で上演されている。