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今週末の良かったこと(『論理哲学論考』、 "articulate" と分節化 、そして "true" or "false" )

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』は、

3.141
Der Satz ist kein Wörtergemisch. – (Wie das musikalische Thema kein Gemisch von Tönen.)
Der Satz ist artikuliert.

https://people.umass.edu/klement/tlp/tlp-hyperlinked.html#p3.141GER

こんなふうに番号が振られた断章で構成されています。番号には階層があり 3 の下には 3.1, 3.2 と続き 3.1 の下にも 3.11, 3.12, のように続きます。メインの骨格が 1 から 7 の大きな番号で与えられ、それに対する議論や補足がその下の階層に書かれる体裁になっています*1

で、この断章は自分がグッと心を掴まれた「分節化」についての断章です。原文はドイツ語です。で、英語版*2だとこうなります。

3.141
A proposition is not a blend of words.—(Just as a theme in music is not a blend of notes.)
A proposition is articulate.

https://people.umass.edu/klement/tlp/tlp-hyperlinked.html#p3.141PM

Google 翻訳と DeepL の助けを借りるとこんな感じになります。

3.141
命題は言葉の組み合わせではない。—(音楽のテーマが音符の組み合わせではないように。)
命題は明瞭である。

あれ? 「分節化」という言葉はそのままでは出てきません。「分節」は『新明解国語辞典』によると、

分節:
ひと続きのものを幾つかの区切りに分けること。また、その区切り(の一つ)。

とあります。そして岩波文庫版(野矢茂樹 訳)のこの部分を見るとこのようになっています。

3.141
命題は語の寄せ集めではない。—(音楽の主題が音の寄せ集めではないように。)
命題が語へと分節化されるのである。

ここでは "A proposition is articulate." が 「命題が語へと分節化される」と翻訳されています。これは、この『論理哲学論考』の全体、もしくは『論理哲学論考』が捉えようとしているこの書物の外側まで広がる全体、を捉えていないと、そのようには翻訳できない気がします。

ここで使われている "articulate" の意味する「明瞭である」「明解である」にはどうも「喋りが明瞭である」というニュアンスがあるらしいです*3。音、声、音声です。つまりここでいう「言葉」には、「文字の言葉」だけではなく「話す言葉」にまで射程が広がっていることが見て取れます。で、話を端折ると、どうやら「分節化」という言葉は、「言語学」、もっと言うとソシュールに繋がっているようです*4


それから、もうちょっと先に進むと、 4.31 でこんな表が出てきます。「真」「偽」です。"true" or "false" です。真理値表です。

gyazo.com

どうやら「境界を引く」という話から始まったこれは、アリストテレス、「種を分ける」、「分節化」、「言語哲学」、ウィトゲンシュタイン、と来て、もしかしたらコンピュータの原始の話に繋がっているのかもしれません。


てな感じに、いまこんなふうに『論理哲学論考』を読んでいます。途方もありません。途方もなすぎてこの先どこまで続くのか見当がつきません。楽しくもあり、楽しくもあり。

*1:野矢茂樹『言語哲学がはじまる』「注」 より、ほぼコピー・アンド・ペースト

*2:Pears/McGuinness translation

*3:articulate - Wiktionary, the free dictionary https://en.wiktionary.org/wiki/articulate

*4:フェルディナン・ド・ソシュール - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB

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